01 —
The Line
際とは
木は含水率で0.2〜0.3%動く。石はほとんど動かない。鋼は温度が10度上がると、1mあたり0.1mm前後伸びる。
動き方の違う三つの素材を、同じ面で突き合わせる。合わせ目に名前をつけるなら、それが際になる。
際は装飾ではない。素材同士の物理的な違いを、そのまま形にした結果でしかない。
02 —
After the Drawing
図面のあとに残る判断
図面には、素材が触れる位置までしか描けない。何ミリ空けるか、どちらを勝たせるか。その先は現場の判断になる。
納まりは大きく三つ。目地は素材と素材の間に意図的な隙間を作る。見切りは異素材の境目に部材を挟んで段差を隠す。留めは木口同士を斜めに落として突き合わせる。
どれを選ぶかは、動く量と見える角度で決める。石と木が並ぶ天板なら目地、ステンレスと木の境目なら見切りを使うことが多い。
03 —
In the Workshop
工房で作る理由
柾風製作所の工房は、春岡市大地町にある。木工とステンレスの板金、石加工の仕上げ工程は、すべて自社の職人が手掛ける。外注するのは、石の原石加工と特殊な塗装仕上げのみ。
図面を引く段階から、実際に加工する職人が同席する。納まりの判断は、机上よりも材料を見ながら決めた方が精度が上がる。
設計と製作を分けないこと。それが柾風が工房を持つ理由になる。
04 —
Ten Years On
十年後の答え合わせ
納品から一年後、無償で点検にうかがう。木部はオイルの塗り直し、天板は必要であれば再研磨する。
見るのは、際が痩せていないかどうか。動きの違う素材が長年こすれ合うと、合わせ目の線が広がったりずれたりすることがある。
十年、二十年と使われて、初めて仕事の答え合わせができる。
「素材は正直です。無理をさせれば、必ずどこかに出ます。際を美しく保つコツは、特別なことをしないこと。動く分だけ、逃がしてやることです。」
桐野 孝(仮) — 株式会社柾風製作所 代表